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堺市が、世界遺産に登録された百舌鳥・古市古墳群のひとつ、仁徳天皇陵古墳(大山古墳)周辺で計画している気球遊覧事業の開始の目途が立たない。永藤英機市長は昨年11月、早ければ22年の早い時期にも試験実施を開始できるとの見通しを示していたが、新型コロナ感染症拡大の影響や、ヘリウムガスの入手難などで、大幅に遅れている。
市観光企画課によると、気球遊覧を行う大仙公園内には既に気球の係留施設の整備が進み、気球本体も完成して英国から日本に到着しているという。
ところが、ヘリウムガスを調達する予定だった米国のプラントでトラブルが発生し、ガスの入手が困難になった。気球を運行する予定のクロスプロジェクトグループ アドバンス(兵庫県豊岡市)と栗生総合計画事務所(東京都文京区)の2社もガスの調達方法を検討しているが目途が立っていないという。
実は、ヘリウムガスは以前から国際的に入手難の状況が続いている。ヘリウムガスは超電導や低温実験に使われ、大学や研究機関での基礎研究には欠かせない。日本は国内で使用するガスの100%を輸入に頼っているが、世界的な半導体産業の競争や医療用MRIの利用拡大で需要が高まり、年々、入手が困難に。
19年には日本物理学会などが、供給不足に対応するため、ヘリウムガスのリサイクルや備蓄施設の整備などを求める声明を出すなど、危機感が高まっている。分析計測機器メーカーの島津製作所(京都市)も、ホームページでヘリウムガム供給不足の対策として、消費量を減らす方法や代替ガスを紹介している。
また、今回の気球と直接関係があるかは分からないが、ロシアによる侵攻を受けたウクライナでもヘリウムガスが製造されており、さらなる供給不足が懸念されているという。最近の円安によって、輸入価格がさらに高騰する可能性もある。
計画ではヘリウムガスを使った気球を昇降機で地上百数十メートルまで上昇させ、仁徳天皇陵古墳をはじめ堺市内を市民や観光客に展望してもらう。
19年に百舌鳥・古市古墳群が世界文化遺産に登録されたのを受け、吉村洋文府知事や永藤市長が、計画を発表。20年4月からの運航を目指していた。