(郷土史家 檜本多加三<檜尾在住>)
泉北ニュータウンと大阪狭山市との境目辺りには、弘法大師(空海)ゆかりの「陶器山七不思議」と呼ばれる場所があります。いずれも弘法大師ゆかりの有難い場所かと思いきや、1か所だけ「人間くさい」話の場所があって、そこを「笹無し山」と呼んでいます。

「お大師さま。風が出てきたようです」
「そうじゃな、笹が揺れておる」
「お大師さま。風が強く、笹の葉の音がやかましくなってきました」
「そうか。笹の葉が風に揺れて、やかましいとな」
弘法大師は、そう言うが早いか、両手を合わせ、真言らしきものを唱えました。すると周囲の笹は一瞬にして枯れ、以後、この地に笹が生えなくなったので「笹無し山」と呼ばれるようになったと言うのです。
他の6か所は、水が湧いたり、病気が治ったりの有難い話ばかりなのに、この笹無し山に関しては、あまり有難い話とは思えません。それどころか、もう一つの笹無し山伝説さえあるのです。
「お大師さま。お顔の色が悪そうに見えるのですが…」
「そうじゃ。どうも腹の具合が悪くてな」
「それは大変」
「いや、そちは先に行ってくれ。わしは、この笹やぶの中で用を足していく」
「それでは、お言葉通りにいたします」
弟子を先に行かせ、笹やぶの中で用を足した弘法大師は、そばにある笹の葉でお尻を拭きました。ところが、その笹の葉は弘法大師のお尻を傷つけてしまったのです。それ以来、この土地に笹は生えなくなってしまったとも伝わります。
有難い伝説ばかりの大師信仰に傷を付けるような話ですが、陶器山七不思議の一つとして伝わっています。


