“走る芸術品”と称される地車(だんじり)。その所以(ゆえん)は、見る者を圧倒する彫刻にある。地車を彩る彫り物の題材は神話や軍記、霊獣、動植物など多岐にわたる。
この彫り物を手がける「彫陽(ほりよう)」山本陽介さん(44歳)は、南河内でも数少ない地車彫刻師。幼い頃から地車に魅了され、彫師への強い憧れと燃えるような情熱を抱いていた。高校卒業後、岸和田の名門・筒井師、岸田師に師事し、2010年に独立。故郷の富田林で「彫陽」を立ち上げた。
桜井町の工房では、朝から夜遅くまで制作に没頭する。長時間座り続けて彫るため、腰を痛めることもあるが「大変なこともあるが、憧れの職業に就けていることがありがたい。この世界で“彫陽作”の新調地車を残せることが本当に幸せに思います」と、感謝の気持ちが原動力になっている。
昨年は貝塚市森町の新調地車を、約4年半かけて岸和田型の出世(しゅっせ)地車(責任者として彫刻を全て請け負い、初めて世に出す新調地車)として完成させた。今年は泉大津市田中町の地車正面部分を彫り替える大修理に取り組む。来年は地元・富田林の新堂地区で久々に地車を新調予定だ。
山本さんの作品を間近で見ると、その美しさに息をのむ。力強さと繊細さを併せ持ち、生命力と躍動感に満ちている。顔の表情や指先の細部にまでこだわりが宿る。「機械に頼らず、自身の手で、ノミだけで彫りたい」と、山本さん。
時代や景気に左右され、後継者や依頼がなければ成り立たない世界。それでも感謝を忘れず、やりがいと誇りを胸に、孤軍奮闘しながら伝統を守り続けている。
彫陽では社名看板や置物などの美術彫刻品も制作。4月の「らぶとん」、年末の「独創会」(岸和田だんじり会館)で作品展示や実演を行っている。インスタやフェイスブックなどでも作品や制作過程を発信。
Instagram:@yosuke.horiyo

