「12歳の言葉、両親に届けたい」
20年前の成人式の日、探しても見つからなかった城山台小学校元6年3組のタイムカプセル。それから月日が流れても、粘り強く再挑戦の計画を練っていた人がいた。藤澤圭一さん、愛称プリ。ところが、コロナ禍の22年、彼が病気で突然帰らぬ人となったとの知らせが届く。残された同級生らはつらい現実に向き合いながら、遺志をつなぎたいと「プロジェクト・プリ〜プリの想いを両親へ」を立ち上げた。
担任の日根野守光さんが受け持っていた6年3組37人は97年3月に卒業。成人式の日の悔しさを忘れていなかった藤澤さんは21年2月、ある企画を立ち上げていた。日根野さんの定年に合わせて、皆で先生の卒業式を行おうというもの。ところが、企画を進めていた彼を病魔が襲う。突然の訃報を受けた同級生の村野貴たか謙のりさんは「事実が信じられず、受け入れるのが本当に難しかった」と振り返る。
その後、残った仲間が藤澤さんの遺志を継ぎ、日根野さんの卒業式を無事に挙行。ただ、以前発掘できなかったタイムカプセルが、同級生らの心にずっと引っかかっていた。藤澤さんも願っていた発掘を実現し「12歳の彼が未来の自分に向けて書いた言葉を、ご両親に届けたい」。こうしてプロジェクト・プリが始まった。
互いに連絡を取り合い2月23日、再び小学校に集合。藤澤さんの家族、そして日根野さんや関係者も来てくれた。地中探査機も用意し、総勢約30人で試みたが、埋めてから28年が経った今回も見つからなかった。
タイムカプセルは見つからなかったが、大勢の人が特別な思いを持ち寄り、藤澤さんを思い出しながら作業できた。同級生の一人、辻本摩耶さんは「プリがみんなを集めてくれた」と感じたそう。人と人をつないでくれる存在だったという生前の藤澤さん。これからも、同級生らの架け橋であり続けることだろう。