南区の酪農団地で乳用牛として飼育される約800頭の牛糞(年間1500トン)を地元の水稲栽培に利用しようと、堺市農水産課が有機農業の実証実験に取り組み始めた。資源の循環、地産地消を促すとともに、環境に配慮したエコ米を増やす狙い。
同課によると昨年度、農家の協力を得て水田一反分を試験栽培し、660キロの米を収穫。検査の結果、全量が「1等級」で、おいしさの指標とされる水分量、たんぱく質、アミロース、食味値のすべてで高水準を獲得、ランク「A」と判定された(全国統一規格)。
ただ、牛糞の普及には課題もある。市内農家の多くが兼業農家で、手間いらずの一発肥(いっぱつごえ、一度の施用で稲作の段階に応じた効果を発揮する追肥いらずの省力型肥料)が使われているため、利便性の確保は必須だ。同課は酪農団地と連携し、牛糞の発酵、乾燥によるペレット化で使いやすさを追求、農家の負担軽減を図る。
一方、普及の追い風となるのは化学肥料の高騰だ。輸入に頼る現状を地産地消で転換できれば、農業経営にとってはプラスとなる。
今後数年をかけ食味検査を継続し、稲の育ちや害虫のつき具合などを検証し、継続、安定的な牛糞の利用をめざす。28年度には化学肥料や農薬の使用量を抑えた水稲面積を2ヘクタールに増やし、米のブランド化を図る考え。