公民連携実証事業で堺市から民間企業に補助金や負担金名目で公費が流れ始めたのは、永藤市政誕生の翌年からだ。泉北ニュータウンでは企業や大学が参加し、スマートシティ実証実験(人工知能など最先端技術を用いて課題を解決するための実験)を集中的に展開してきた=9ページ表参照。
本紙が掴んでいる21件だけで総費用はおよそ4300万円にのぼる(職員の人件費除く)。だか、事業化し、行政課題が解決できた事例はほとんどない。
表番号1番は、近隣センターでスーパーなどの核店舗が撤退する中、赤坂台近隣センターやUR原山台など4か所で移動販売やキッチンカーの配車を試みたが、委託期間が過ぎると、採算がとれないとして事業者は撤退した。
2~3番も現在市内では運用されていない。5~6番も一時的に実装に至ったが、現在はリモートワーク拠点はない。
7番も採算がとれないとして事業者は撤退。これにより南海不動産を代表企業とする民間活力による都市公園運営事業もその後、空中分解した。
9番は貸出ポートを確保できず、採算もとれず撤退。
10番は共同事業者倒産で、実証実験自体が頓挫した。
市はあまりに簡単に連携し、事業者は簡単に撤退する。住民ニーズを把握せず、事業者の意向優先で突っ走るからだ。13~14番、17番は徐々に利用者が増えているが、採算性があるかは疑問。現在、万博開催期間で運行休止中。
12番、19番の事業者であるNTTマーケティングアクトプロクスでは23年に928万件もの顧客情報の持ち出し事件が発覚したのに、市は繰り返し連携している。
南区以外も含めると、連携事業数は70以上にのぼる。事業ごとの効果も検証されないまま、連携自体が目的化しているのは、泉北ニューデザイン推進室にスマートシティ担当を、政策企画部に公民連携窓口(さかいコネクテッド・デスク)を設置したことにある。いずれも連携事業のアクセル役だ。全体的に事業を統括しブレーキ役を担う部署がない。