訪日外国人に大仙公園など
行政だけでは解決できない社会課題に民間と連携し解決を図る公民連携事業が自治体のトレンドとなって久しい。
公民連携の名のもとに税や職員のマンパワーを浪費していないか。堺市でのケースを不定期に検証し、「公民連携の裏側」を探る。
堺市公民連携課には昨年度、民間企業から相談も含め25件の事業提案が寄せられた。そのうち、9件が庁内選定委員会の審査を経てWILLER ACROSS(東京都=旅行関連会社)の事業が採択された。
W社は市内観光ツアー4コース(延べ8日間)の実証運行を提案。夜の大仙公園~居酒屋横丁へ繰り出すコースや、堺打ち刃物の鍛冶見学~包丁研ぎ・柄付をするコースなどディープな体験プランを売り出した。いずれも泊を伴わない、早朝や夜間のすき間時間を利用したツアーだ。
ターゲットは訪日外国人。価格は2万5千円~4万2千円と強気の設定だった。
だが、募集開始後1か月の時点で正規の申込者は1人のみだったため、W社のメルマガ会員に半額や1割負担でモニター募集をかけた。それでも参加者は思うように集まらず、最後はW社の提携企業に募集を依頼、無料で参加できる招待客を集めた。ところが、ツアー当日までにキャンセルが相次ぎ、結局、全日程での参加者は10人(外国人6人、日本人4人)だった。
市は参加者の目標値を80人と見積もっており、この点について源げんの埜豊晃公民連携課長は「正直、寂しい数字」と話す。
事業にはツアーのほか、インフルエンサーを起用したSNS動画配信やWILLER会員向けのメルマガ配信、アンケートの実施、分析などが含まれる。
W社が市に提出した事業収支報告によると、収入は参加者から支払われた旅行代金(キャンセル料含む)3万3720円。
市が300万円を負担
一方、経費など支出は593万979円だった。うち300万円を市が負担した。なお、実証事業は今後も続くが、今年度以降の市の負担はない。