特定外来生物クビアカツヤカミキリによる桜などの食害が国内各地に広がる中、富田林市では公園緑化協会の樹木医・土居常隆さんの活躍で防除に目覚ましい効果を上げている。具体的な防除法を聞き、実効性の要因を探った。
2016年に藤沢台などでクビアカによる食害が確認されてから、一時は桜の年間の伐採本数が市内で300本を上回る年もあった。
だが、本格的に薬剤の樹幹注入を行うことにより、現在はフラス(木くずと虫の糞が混ざったおがくず状の物質)の排出が止まり、ふたたび樹勢を取り戻した桜が多数確認されている。追跡調査を行った公園における23年の防除率は90%にのぼり、その後、新たにフラスが確認される木はあるものの、現在も同程度の防除率を維持している。
「梅の里3号公園」のソメイヨシノ11本(13本のうち2本は伐採)を例にとると、樹幹注入剤リバイブによる処理以前は、フラス孔数は全部で72か所あったが、2年半後には1か所に減少、さらに1年後の今年5月は、2か所が確認されているのみ。
具体的方法は、樹幹に穴をあけ20㏄入りリバイブを10〜15センチ間隔で、幹に薬剤がいきわたるよう注入。注入後2年は薬効があり、葉につく毛虫にも効果を発揮した。
土居さんは、樹幹注入は木に負担をかける可能性があるため、できれば1度だけにしたい考えだが、今後は状況に応じ、使用するかどうか判断したい、としている。
木の状態を丹念に見きわめた対策が奏功したわけだが、高防除率の達成には、ほかにも要因があった。協会はクビアカ発生以前から公園緑地、街路樹、公益施設の樹木管理業務を市から受託しているため、市内全体の被害状況を把握しやすい。市環境衛生課の北浦淳士生活環境係長によると、公園や道路、学校といった管理者が異なる桜を守るため、庁内の横断的会議に協会が参加、それぞれの実情を直接聞き、対策を打ってきたという。行政が陥りやすい縦割りの弊害を打破していたのだ。
市では防除ネットによる対策は行わず、夏の産卵期は樹皮に薬剤散布を行っている。散布に際しては、住民の理解を得るため、ビラを配り協力を求めているが、ビラが民間へのクビアカ駆除の啓発にも一役買っている。
取材の終わりに土居さんがひと言。「春の開花、秋の紅葉、それに桜は美しい樹肌も見て楽しんでほしい。だからネットは巻きたくないのです」と。住民に愛でられる樹木を守ること。それが、土居さんの喜びにつながっている。